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JLAU観光部会フィールドワークVol.13

山岳高原リゾート研究 -みなかみ町のタウンサイト

実施概要

日時:2024年7月13日(土)~14日(日)
場所:群馬県利根郡みなかみ市
主催:(一社)ランドスケープアーキテクト連盟(JLAU)
随行者:鈴木裕治 氏(オンサイト計画設計事務所取締役パートナー、JLAU事業セミナー委員長)
参加者:10名
ゲスト:北山郁人(NPO法人奥利根水源地域ネットワーク、森林塾青水塾長、みなかみ町移住コンシェルジュ)

[概要]

 観光部会では、2022年よりわが国の山岳高原リゾートのあり方について検討を重ねてきました。そして今年5月より実施中の勉強会の内容も踏まえながら、群馬県利根郡みなかみ町を対象に長期滞在を可能にする山岳高原リゾートのあり方を研究するため、観光拠点となるタウンサイトに焦点を当て、この地でしか味わえない食や体験、ランドスケープや建築、まちづくり等について、リサーチを主体としたフィールドワークを行うことを目的とします。

[フィールドワークの様子]


 ◎DAY1 7/13(土)
 10時、上毛高原駅に集合し、レンタカーに乗って水上駅方向に向かって出発しました。

<プライベートサウナ付き貸切グランピング・ヴィラ施設「MOOSKA DE STUBEN」を見学>
 オーナーの方に薪サウナ、谷川岳を望む水風呂や外気浴スペース、ダイニングキッチンなど施設を案内していただきました。低温高湿度サウナで室内温度は、低め(温度60-80°、湿度50-60°)に設定しているとのことで、呼吸がしやすく湿度が高いので身体も温まるようです。サウナやファイヤーピットで使う薪は、林業をしているゲストの北山さんから購入しており、色々な樹種の薪を使用しているのが興味深かったです。利根川源流の水を汲み上げ水風呂は、真夏でも水温14°だそうです。地域の資源を最大限に活かした素敵な施設でした。

 <利根川沿いを北上し、谷川温泉地域へ>
谷川岳八景の一つに選ばれている恋沢ガーデンは、迫力ある爼嵓(マナイタグラ)を眺める絶好の視点場です。昔は爼嵓を谷川岳と呼んでいたようで、これが本物の谷川岳なんだと教えてもらいました。ちなみに恋沢ガーデンは、草花で彩られた公衆便所一帯の総称です。公衆便所だけでなく展望場所として設えてなかったのが残念。

 次にそこから約500mのところにある風光明媚な天一美術館に行きました。吉村順三の遺作となった美術館で、岸田劉生の麗子像などが展示しています。野面積みの石垣を基壇とした高台に立地しており、静かで気持ちいい場所でした。舞台のようなつくりをした中庭は、かつて爼嵓を背景に設計されたように思えましたが、周りの樹木が生長し、眺望できませんでした。今後の樹木管理でかつての景観を取り戻すことが出来ると良いと思いました。

 美術館から歩いて世界のコーヒーを提供する泊まれるロースタリーカフェへ。おいしいコーヒーを飲んで小休憩。木陰が心地よく、長い時間のんびりできそうなテラス空間でした。海外の方がオーナーで運営しており、お客さんも海外の方が多そうです。

<蒸気機関車が停車する水上駅周りでランチタイム>
 12時半、駅前の「そば処くぼ田」で、みなかみ産蕎麦粉と米粉を使用した米粉つなぎの二八蕎麦をいただきました。水資源が豊かな場所はお蕎麦がおいしい。

 食後の一杯は、自宅を改築して作ったカフェカスミリビング。家業が大工さんとのことで、自らカフェを作られそうです。なるべく使えるものは残し、環境に優しいものづくりがモットーと伺いました。建材を処分するのも環境負荷がかかるので、色んなものを貰ってきてストックしてあるとのこと。 

<コワーキングスペースほとりで、北山さんの活動紹介>
 14時、NPO法人奥利根水源地域ネットワークや森林塾青水塾などで活動している北山さんの取組みをお伺いしました。とてもユニークな経歴の持ち主で、一言で説明するのが難しいですが、学生時代に巨木に魅了されたことが林業に携わる原点だったように思いました。自然をよく観ることの大切さを学び、現在の活動に繋がっているのだと感じました。将来巨木に育つ可能性がある木を残しながら、一回の間伐で1~2割伐採する自伐型林業を取組んでおり、200年の森づくりを目指す姿勢はとても好印象でした。薪、製材、家具、ヘッドホン、アロマオイルなど、森林資源の多様な活用が、地域の好循環を生み出し、まちを活性化させていると思いました。

<駅周辺市街地のフィールドワーク>
 17時、主に川とまちとの関係を意識しながら市街地や利根川沿いの遊歩道を散策しました。ダムの放流があるためか川辺に降りられる場所がほとんどなく、川辺には人が一人もいませんでした。かつては川にまち向いていた名残はありましたが、現在は川に背を向けているような感じがしました。


 ◎DAY2 7/14(日)
 2日目(7/14)、利根川の最上流に位置する藤原地区にある上ノ原入会地を見学しました。前日のレクチャーで説明のあった自伐型林業の作業ほか、茅場の保全と維持の経緯と状況、入会地奥の樹林や湧水などの自然環境について北山氏にレクチャーしていただきました。

 その後、2つのチームに分かれ、赤谷川流域と湯檜曽川流域を視察しました。
 赤谷川流域視察チームは、藤原地区からの移動中継地の水上駅周辺にてブックカフェを見学後、三国街道須川宿にあるたくみの里、湯宿温泉にあるカフェを見学しました。
 旧書店後をリノベーションしたブックカフェ「Walk On Water」は、観光客やハイカーなど、訪れる人々の起点と帰着の場としてもてなし、地域の人々が気軽に訪れるタウンサイトの交流拠点として、雨の日も多くの人で賑わっていました。バルコニー庇下の入口前空間は、思わず立ち止まってしまう止まり木のようで、店内はみなかみ町の個性を映し出す本やグッズ類に囲まれ、おいしい水で作られたコーヒーや地域農産物をつかったメニューを提供し、心安らぐ場所でした。 

 約330haの広大なエリア内に整備された「たくみの里」は、2022年(第11回FW)にも視察しましたが、前回視察にしていなかったメンバーでの再視察です。工房や資料館のほか、飲食店や宿泊施設、観光農園、道の駅などがあり、手作り体験、そば打ち、果物狩り、地元食、地産品、郷土史など、様々なみなかみの魅力を味わえる拠点となっていますが、電柱をセットバックし、脇本陣屋敷跡をはじめとした木造建築、街道脇の水路や植栽などが美しく調和し、古くより旅の拠点であった三国街道須川宿の農村風景を現在に伝えています。

 湯宿温泉街にある元美容室をリノベーションしたカフェ「Plants & Coffee ね」は、プランツショップとデザイン事務所、カフェがあります。駐車場周辺には無人直売所があり、つい散策したくなる路地を経て入口へ。1階は入口に地域イベントの情報掲示、向かいのカウンターは植物の購入、地域のデザイン相談、コーヒー注文の様々な窓口となっており、2階は吹き抜けを中心にファニチャー類ほか、デザインしたプロダクトや植物が点在し、明るく居心地よいカフェ空間となっています。不定期で夜喫茶もやっているそうで、地域に馴染み、ゆったりとした時間を味わえる場所でした。

 <湯檜曽川流域フィールドワーク>
 14時、日本一のもぐら駅と呼ばれる土合駅(階段338m・462段)。かつては谷川岳を目指す登山客で賑わっていたとのことですが、現在は無人駅です。地下ホームを見に来る観光客がちょこちょこいる感じでした。直線で延々と地下に延びる階段はSFの世界観です。地下ホームは一年を通じて低温で気温の変動が少ないことからビール熟成させる場として使われているのが面白かったです。

駅に隣接する土合ビレッジは、管理者がいなく内見できませんでした。

(文責:井野貴文、高橋佳祐)

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