【ROAD TO 2023 JLAUが掲げる3つのテーマ オンラインセミナー】

Landscape Culture vol.02 「ランドスケープ×地域文化」

開催概要

日 時 | 令和4年1月31 日(月)
会 場 | オンライン (ZOOM ウェビナー )
登壇者 |
内倉真裕美 氏(株式会社きゃろっと専務取締役)
水野 成美 氏(株式会社たりたり 代表取締役)
村元 奈津氏(森とグリーンウッドワーク代表)
平賀 達也氏(株式会社ランドスケープ・プラス代表)
参加者 | 195 名(登壇者、スタッフ含む)
主 催 (一社)ランドスケープアーキテクト連盟

JLAU は 2023 年に日本で開催する国際会議「IFLA-APR 大会」に向け、メインテーマである「Living with Disasters/ 自然とともに生きていく」を支える3つのテーマ「Green Infrastructure」「Well-being」 「Landscape Culture」に即したオンラインセミナーシリーズを開催しています。「Landscape Culture」に よる第二回目となる本セミナーでは、公園や緑地を舞台に活動されている内倉真裕美さん、水野成美さん、 村元奈津さんの三名をお迎えし、「ランドスケープ × 地域文化」というテーマでそれぞれの活動と未来に 向けたメッセージをお伺いしました。

講演内容

内倉さんによる活動内容紹介

まず、内倉さんよりご自身の活動紹介をしていただきました。北海道の新興住宅地である恵み野に移住さ れた内倉さんは、「恵み野を子供たちの故郷にしたい」という想いの元、文化サークルの発足の他、花によ るまちづくりを進められてきました。文化的な蓄積のなかった街に、そこに住まう人たち自身で新たに歴史を 積み重ね、まち全体で花々の美しい風景を育んでいっている様が印象的でした。

水野さんによる活動内容紹介

次に、水野さんよりご自身の活動を紹介していただきました。水野さんは、都心部に位置し、再開発が行 われている真っ只中である青山の地において、自然を活用した、地域の人たちの交流、文化活動の場づくり を進められています。最終的な目標を世界平和に見据え、自然との共生や記憶や記録の蓄積をする中で、 地元の意見を吸い出しながら、青山の持つ資産を活かす方法を模索する様子をご紹介いただきました。

村元さんによる活動内容紹介

最後に、村元さんによる活動紹介です。佐賀県の江北町にて、「みんなの公園」のディレクターとして活 躍される村元さんは、公園の維持管理・窓口業務、情報発信等を担当されています。「居心地の良い空間 づくり、まちのみんなの公園であること、続けること・長い目で見ること」の3つを大切にしながら、利用 者からの意見を丁寧に拾いあげ、あらゆる人が楽しめる公園を模索する前向きな姿勢が印象的でした。

平賀さん × 内倉さん・水野さん・村元さんのトークセッション

お三方の活動内容の紹介を受け、平賀さんのコーディネートのもと、それぞれの想いをさらに深堀りして いきました。
■ランドスケープを考える上で「地域らしさ」を重要な視点と捉えているが、地域に根差した活動をされて いるお三方にとって、「地域らしさ」をどう考えているか。 (内倉さん)
恵庭が新興住宅地であったことから、新しいことに取り組むことに積極的で、人と人が繋がり やすい地域性であった。そのような背景から、花のまちづくりがどんどん広がり、当初の想いのように、第 二世代が故郷として恵庭の花を大切にしてくれていると感じている。 (水野さん)住む人・働く人・遊びに来る人といった、日常的な交流が少ない人同士が多くいる、都心なら ではの地域性と言える。だからこそ、挨拶しあえる関係の人が少しでも増える環境をつくりたい。自然は、 肩の力が抜ける場、フラットな心で交流できる場所として、とても有効だと感じている。 (村元さん)江北町は人口 9000 人程の地域で、公園に行けば知っている誰かに会えるような距離感である。 元々宿場町であり、外から来る人との交流が多かった土地柄を活かし、県外からの利用者と地元の利用者 の両者のうまい関係性づくりを模索している。

■お三方とも、「〜はしないでください。」というルールをなるべく作らないように取り組まれているように感 じる。ルールづくりはどのような工夫をしているか。 (村元さん)
みんなが楽しく、かつ安心して利用できるルールづくりを常に試行錯誤している。立場上、利 用者のリアクションを受け取りやすいため、常に新たなニーズが拾えて次に生かせる点が公園の良いところと 感じている。 (水野さん)単に「~はしないでください。」と禁止するのではなく、なぜダメなのかという説明を、そこに どんな生き物がどのように暮らしているか、という環境教育とともに伝えるようにしている。 (内倉さん)言葉だけでは伝わりきらないものも、時間をかけて目に見える形になるとみんなに理解しても らえる。仲間をつくりながら、みんなの得意分野を探して、楽しみながら進めることが重要だと思う。

■最後に、若い人たちへのアドバイスをいただきたい。
(内倉さん)やりたいなと思ったことを、まずやってみることが大事。それを良いねと思ってくれる仲間が徐々 に増えていくと思う。 (水野さん)老若男女、人それぞれに得意不得意がある。若者ならではのパワーもあるので、ぜひまちに出て、 積極的にまちと関わりを持ってほしい。 (村元さん)やりたいことを声に出してみる、誰かに直接話してみることが大切。伝えてみることで案外簡単 に実現できることも多いはず。

JLAU Landscape Culture チームより質疑応答

お三方の活動内容紹介、平賀さんとのトークセッションを受け、JLAU Landscape Culture のメンバーとして、 吉武さんのコーディネートの元、西口さん、片木さん、盛岡の3名で、お三方に質問させていただきました。 (西口さん→村元さん)

Q. 公園利用者に、公園を「わたしの場所」と捉えてもらえるよう、どうような工夫をしているか。
A. SNSだけでなく、手作り新聞を発行する等、あらゆる世代が楽しめるような取り組みをしている。そういっ た活動のなかで、みんなに少しずつ自分の場所だという意識が芽生えいっていると感じている。
(盛岡→内倉さん)

Q. 観光客や観光地化していくことをどう捉えているか。
A. 個々の庭であるオープンガーデンではなく、新たに生まれる花の拠点である「はなふる」を楽しんでも らえる仕組みや、地域の花の台所として花苗生産ともうまくつながる仕組みをつくっている最中で、新たな 恵庭の中のガーデンツーリズムを考えている。
(片木さん→水野さん)

Q. 過去の青山から未来の青山をどう見据えているか。
A. 自然のちからとともに、青山という地で育まれてきた、そこに住み働く人の持つちからを活かしたいと 考えている。ののあおやまが、都心部においても人と人が繋がれる場となれば嬉しい。

最後に、今後チャレンジしたいこと、今後の展望をお伺いしました。
(内倉さん)次につながる人を育てたい。恵庭の花の風景が今後も末永く続いていくように、新しい世代に バトンタッチをすることが今後の役目と考えている。
(水野さん)今後 100 年の「都会」というものをどう捉えるか、そこに住み、働く人たち自身が考え、良い 仲間を増やしながら、まちづくりをしていけるような仕掛けをしたい。
(村元さん)予算や様々な事情から、自分たちだけではできないようなことを、仲間を増やしながら、継続 的にチャレンジし続けていきたい。

さいごに

今回は「Landscape Culture」のセミナー第二回目として、地域文化の視点からランドスケープの果たすべき 役割を改めて考える機会となりました。楽しみながらプレイヤーとして関わり続けるお三方のお話に大変感銘 を受けました。視聴者の皆様、対談を快諾頂いた内倉様、水野様、村元様、登壇者・運営チームの皆様に はこの場をお借りして御礼申し上げます。

(文責:盛岡尋平)

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