開催概要
日時:令和3 年11月14日(日)17:00〜19:30
場所:オンライン( Web会議サービス Zoom YouTube) +部会メンバーのみ現地(大和リース)
講師:石井秀幸(スタジオテラ)
参加者: 53名+講師、スタッフ12名+ YouTube視聴者
主催: (一社)ランドスケープアーキテクト連盟関西ランドスケープセミナー部会
01. ノミガワスタジオ
石井さんには、人の原風景を作ること・つなげるために幾つかの大切なキーワードと試みがありました。
ボーダーレスな場作り•あるべき姿を考える・変化を前提にした場作り・1守む場所を作る・日常と非日常が混在する場所を作る・終わりのない場作り
ノミガワスタジオは、様々な人の共同運営の本屋で、多岐に渡るワークショップや古本市などを各々が自発的に企画し運営しています。
スタジオの外にもはみ出したワークショップなどの人々の交流の風景は、さらに町や通りすがりの人にも影響し、まさに設計者が主体となるのではなく、使う人が自発的に関わりたくなる空間となっていました。
大事にしている様々な風景作りのキーワードを介して行き着いた、「自分ごと化する。」という石井さんの言葉にあるように、自分のための行動から始まり、積極的に社会と繋がっていける場がここには形成されているように感じました。
02. 町田薬師池公園四季彩の杜西園ウェルカムゲート
元々複数の公園が広がる場所で、周辺には雑木林や畑が残っており、東京では珍しい長閑な風景である町田薬師池公園では、四季彩の杜西園ウェルカムゲートのプロジェクトがはじまる上で、ブランディングと建築・ランドスケープ設計が連携し、当初からワークショップや協議を行うことにより、使い方を含めて一貫性のあるプロセスによる公共空間作りが行われました。
リサーチやフィールドワークによって見つけた、土地に残る古くからある道・起伏・自然といった土地のポテンシャルを生かし、土地に寄り添う分棟の木造建築がランドスケープ空間との融合を図りながら、雑木林に囲まれた集落のような場を生み出すことができました。
丘の上から仲みながら見える風景は、自分たちの住む住まい・街並みとつながり、日常風景の延長にあるのがこの場所なんだと感じられるようにすることで、日々通われる方が増えるなど徐々に町田の人たちの文化拠点となっています。住民が関わり合っていくことで、終わりのない場作りが出来上がっているようです。
03. 大阪中之島美術館
来年2 月に完成予定の中之島美術館は、「美術館を日常の場とする」をテーマに計画が行われました。浮遊したような黒い美術館と、それを水平・垂直の動線がつなぐ立体的な緑の風景が特徴的であり、芝生広場を始め、階段の脇や緑の間に潜むような多様な居場所を美術館回りに点在させる計画となっています。当初から敷地の高低差を生かすためのスロープのスタディを沢山の模型を作りながら模索していたそうです。
既存の歩道と段々につながるスロープが地続きとなり、緩やかなシーンを繋ぐ傾斜道の散策路というところから、町田の物件とも少し通ずるところもあったそうです。
大阪市による竣工までの経過発信や、造園業者総出での植え付けの風景など、これらの関わりがまた「自分ごと化する」きっかけとなり、新しい大阪の美術館の風景が出来上がっていくのを感じました。
04. 石巻・川の上プロジェクト
石巻での約800世帯の新たな共同体のための場づくりとして図書館や塾などの施設を作る中でもやはり、住民との関わりの中で場作りが行われていました。
朝市やワークショップが行われいていく中で、中にはここを使いたいという住民も出てくるようになっているそうで、様々な住民の自分ごとの場となっているのが、ノミガワスタジオでの影響も受けていたように感じたそうです。
広場は使われている薪を通した関わりの生む場を目指し計画され、住民とともに作業する中での関わりの風景が、外へと広がりさらに新たな関係性を生んでいました。
そんな連続する出会いをうむこの場所が、各々の自分ごと化するスイッチとなっているように感じました。
質問・意見交換
今回はオンラインでのQ&A形式のチャットと、会場からの質疑を用いて質問に答えていただきました。
自分ごと化するというテーマをベースにしつつも、設計者が運営者やボランティアとして関わってしまうのではなく、自分の手から離れることが前提として、最終的な場所の使われ方や風景を住民の自発的なものに委ねており、関わりがなければなくていいというスタンスでいるそうです。分析やリサーチと、石井さん自身の丁寧な場所と人との関わりが、一つ一つのプロジェクトの人間味やその土地の原風景を生む理由となっているように思いました。
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プロジェクトごとの丁寧なリサーチや、とことん場所とひとに関わりを持っていくことで、等しくないその場所本来の埋もれた原風景が発掘されていくような印象を持ちました。
常に人の写り込む様々なプロジェクトの写真が、その場所を擬似体験するような感覚となり非常に有意義で貴重な体験となりました。
今回のセミナーの様子については、石井さんのご好意もありにてアーカイブとして公開されております。今後の関西ランドスケープセミナーの活動についてもよろしくお願い申し上げます。
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(文責:福田)